詩集「気球乗りの庭」

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弾倉

弾倉





芝生の下でひとねむりの核弾頭が
くろありの巣の乱を夢うつつに聞く
地形に文句のつけようはないはず
春の日うららかカードのひとそろい

すねた西瓜がひとりで割れて匂う
おなかに貼った自分の注意書も破れ
廊下に出て来た地主の孫がけおとす
食べないものはくろありにやるんだ

雉子が黄金色のきくの垣根に氷る
土蔵の蔭だから山の変形も構わん
廃止とミキサ−班の間の元勲たちが
粘土を指でつぶして設計図に食わす

時間が来てスプリンクラーが伸びる
かぶった鳥の糞をとばし水撒きする
日にかがやく飛沫の下に入るもの
ほんのちょっとでいい 赤ん坊にも水やりを!

いや今日の水撒きはこれでおしまいだよ
涼しいうちに昼食だと鍋叩く音で
どやどやと拳族集まり戦車も仲間入り
ばあさんの漬けた物があれば何もいらない!

屋根裏部屋へ這い上った鉛のパイプライン
あたしのミシンの邪魔して何て厭な奴なんだ
そこで食べ終った男から上っていき
命令たけ箒洗剤フォークリフト等で打つ

これでまた暫くは綻びることもないだろう
芝生の新芽の品評会を開いて御接待
恐怖心を抑えに抑えて今日はよく来てくれた
葉巻をとれ口輪をとれ子供には花火をとれ

おお もうそんなには頂けません主よ主よ
積台の接手が錆びたように叫んでいる
最後にわしを載せて帰る しゃんとしてろ
長靴で車輛をつっつき歎願するのが見える

ぼたん雪に閉されたくろありの選挙区に
ダブルチェーンつけて旦那衆が浮揚してくる
忘れろのお望み通り埋成物って何だった?
それは地球のようにあるもの嚥下したもの



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