部屋の近くの点滅信号に目がいくどうしてなんだろう。夜の赤い点滅信号を見るともなく見ながら歩いて。どうしてちゃん と人とふつうに話せないんだろう。ひとりでいるのが淋しいくせに、ひとりでいるのが好 きなのか。こわいのかなとも考える。心の底からうちとけあえて、笑いあえるような、そ ういうことがあればいいのに。 赤い点滅信号は機械仕掛けだから、一定に赤くなり、点滅して。 (話しがしたいと思う、話しがしたい。 (言葉が言葉そのままで受けたり、渡したり、 (そのままのかたちで、はばで、言葉が言葉そのままで (届いていると思いあえるような (そんな関係がほしい。 点滅信号は見ているとやすらかな気持ちになれて。 二階のこの部屋に戻ってからもしばらく窓から見ていた。 畑と民家の、ほかにあかりのない夜道の 十字路の 軽自動車が一時停止してゆっくりとまた進みだした。民家ですぐに見えなくなった。 見ているとやすらかな気持ちになれて これが夜の自分の心臓なのだと、呼吸する夜の自分の心臓なのだと思うことにした これが夜の自分の心臓なのだと、たわむ電線と地面に反射している赤い、点滅の、 これが夜の自分の心臓なのだと。 (ほんとは大声あげて泣きじゃくりたいのに、泣くこともできない。 カーテンを閉めて ああ、あれが夜の自分の心臓なのだと ねむる 少しだけ 目を閉じて、ねむるちいさな舟になる |