詩集「世界の終わりのまえに」

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食卓のサバンナで

食卓のサバンナで





食卓のサバンナから獲物を狩り出してみよう
ふちをうるさく叩いて三周
盛り上る肉汁の森 まるいバターの木蔭から
やすんだ最終の美酒を追いだす
滴ごとに飛ぶものの名を与えてから
のみ下したあと歯が鳴り出してしまった

ルーペからはみ出した自身の鰭から
挽肉にかかりサラダ油がしみこんでくる
小骨と共に紋つきの殻へ入り施錠
転覆した食卓はこぼした水分の中でとける
いいかと覗くと
立上った半透明のフォークがつついて探しまわる

殻の軋りとスパークとで
この小さな黄色のシーンヘ犀のように入ったものを知る
舌が選り分け
天上へ連行するのはこれに決めたといっている
どうか半潰れのピザパイでありますように

しっぽで立ってそのまま悪夢を見ようじゃないか
ぺっと吐いたすじまじりの中にころがっているなら

洞穴焼を一族揃って囲んだこともあったよね
三食同じじゃ嫌といって出ていった
両親の伝授からは一品ずつ減っていたが
塩の小瓶をポケットに問題じゃあなかったのさ
白銀の芒が門のように結んでいる
下を通過したわだちが深くついていた

ちょっとした冬のギャップで
調味料をまちがえたのが始まりだった
なまの葉へ
慣れるし耐えられるという護符の文句を吹込んでいた
皿の上は腐ることもなくなり
皿の歩き方とふとり方が身についた

台状の地の涯へ出た
柔軟な狼たちはへりに並び
涯の下へ半身のりだし手を伸ばし
大好きな球根をつかみ取る
あんなには体をかがめられないな
鱗片でも皮のかけらでもいいとうろつくうちに
足を踏み外して緑の絨緞へ転落する



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