詩集「目盛りある日」

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ふたたびみたび旅また旅

ふたたびみたび旅また旅





瓦礫区間から旧いヤード区間へ
通り抜けの割引回数券をつぎつぎ切っていく
ポイント中立
ガイドは姿を消したが 走りやすい
肩を押すのは誰ですか?

首の袋がおたがいに券でふくれている
使い途というのはいくらでもあるものだ
信号機林立
これからは首も袋も飾りたてよう
どう見られるかの選択

行先板に経由地のこらず記して先にたて
下り勾配を駆ける百足ははやい
あまった両腕は頭上で甲羅となり
齢の順にそこどけそこどけ

熱いのはレール
親父ゆずりの重い靴底は何とか保っている
ささった歯も牙も何か識らせたかったらしい
ならばプールサイドでも滑りませぬよう

巨大平安の駅の暑熱 まどぎわに天国製の百合の造花
息をとめて足の幅を広げようとやってみる
この光るつぼのスパイラル線区間
抜けさえすれば一本道だとか

やはり湯気の中のぬれねずみには疾走感はない
おっそろしく速いと皮が燃える
聞かされた道中記を忘れられようか
汗のしずくを観測して
停船!

抜きつ抜かれつしながら気のいい指のサイン
石の埴輪めぐらせた帝国侵出口に到り
あなたこの先は? 確かに入場券ここに入れておいた
石がずれて触りに来た

ここはひとつ薄い胸も大気吐く芸当を!
それならそんな仕度もしておくのだった
飽和蒸気にふくれあがって
赤ん坊のように這っていたこともあったのだから

夜桜見物に勝手口から出る
提灯の灯がつくるふらつく影で
古い戦線の残存迷路をかきわけている
まんまるいお面の紙の鼻で誘導されて

記憶に折りたたみ線をつけて四角に畳む
あなたが淋しがった真青な角も折りこむ
としつき経て滑走路は厚くなるのだろう
枯枝と反古を詰めた編隊が
口でエンジンの音させて列線に並ぶとき

上空からの木の芽出し情報は
ビデオで繰返してみれば
たしかに十五年以前のジャングルのもの
緑のボデイヘの照り返し
菌糸の奥地を肩で風切るあのいつもの男たち

坐って楽になさってだって
旅がここからコーナーのセール期間だった
そう混んでいるのでもなく
おしゃべりとソフトクリーム片手に手続きをする
袋なんかいらない
サンプルとキットの生えそろった大平原へ



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