詩集「目盛りある日」

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ホワイト・ポイント

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〈そこへなら、行く〉と記されたメモ。
どこへの途中にもいるはずがない。
紙片の指す向きはローマ 濡れてはりついて。

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鐘の音がすきまをパテ塗りしている。
そのあとを歩く蟻。
おまえが溶かすわたしの背中 出られやしない。

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落下タンク付きの蝿三機 難民の列を逆流する。

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先攻め 鮫叩き すいか刺殺 ムーンビーチ。

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穴居の旗をかっさらって急降下ついでの窒息。
それまでしていいのか。
丸太ん捧持って入口まで行ってみれば 回収空母イオージマ浮ぶ。

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前方予報 覆土は都にこぼれ
すこし気の利いたものはとっくに都をあとにした
ただの鉄塊のチューナーがぶつくさいう。

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よい車輸は行先地に着くまでによりよくなる、というパイロットの口癖
 のひとつ。

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非常脚下げ この地のミカン実らせる温暖とおまえの静穏が受け入れて
 くれるか。

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ドサ回りのミサイルに脅されていた。
谷間ひとつ隔てれば奴のお囃子も聞えはしないのにね。
眠れるヴィノ。

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ターンで大振りになる手を待ちうける死人。
唾つけないでくれ、
ついて来るのはしかたないんだが。
詰めにくくなった星屑おとす砂時計。
駅前広場に設置。

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餌がなくても地中海。
白堊によって
搭乗券を偽造する。



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