夏雲遠くまで歩いた田んぼ道に、古い釣り堀の看板があって釣り堀があった。釣っている人 もいないし、よく見れば水もほとんどないのでやってないのかなぁーと思ったが、食堂の 窓からのぞくとおじさんが椅子に座っていたのだ。おじさんも驚いたような顔だった。「 釣り出来るんですか」つい余計なことをたずねてしまった。にこやかに表に出て来たおじ さんは植木に水をやりだした。「竿がないと、釣り竿持ってこなくちゃ」。食堂の隅にド ラムセットが組まれていた。閉店後たとえば息子が叩くとしても、釣り堀にドラムセット はへんだ。カレーライスとかラーメンとか、貼り紙があったけど。 「それじゃあ」「うん、竿持ってね」なんだかおかしな間だったな。空は夏雲が広がって いて、数えきれないくらいのひまわりが咲いていて。 |