野村尚志詩集2000年11月

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夜の蕎麦の白い花

夜の蕎麦の白い花




深夜の日光街道のバス停に座って
遠くまで白くかすむ蕎麦の畑を見ていた
突然に思い立ってたまった台所の洗い物をして外に出て歩いたのだった
月がとても明るくて
これが月の光というものなのかというような明るさだった
雲もなく
帰り
自分の部屋のアパートの
屋根が
月の光で白く雪をかぶったようになっていた
アパートに近づくにつれだんだんと
もとのくろい部分がひろがって
階段の手前まで来ると完全に
白い雪のようなところは
なくなった


 (

 (耳栓をしたままでかけていることに途中で気づいた。が、そのままにしていた。この
  ところ、部屋のなかで耳栓をしていることが何年ぶりかで多くなった。

 (そのままにして歩いているうちに、耳栓をしていることはまた気の外に出て行った。
  のだろう。耳栓をしていることが気の外に入って行ったと言うべきか。

 (机の上の受け皿に、耳栓をはずしてのせていた。




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