小沢和史詩集2001〜2002

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河原の骨を掴む

河原の骨を掴む










河原の石のベッドに横になるろっ骨。

むき出しのテトラポットに絡まる木の根っこ。

暖められた塊の

乾いた肌を

頭蓋骨と擦りあわせる男。



六月の晴れた日に

流木を拾いに来たのだが、

この河にはあまり水がない。

ダムで淀む水を想像して上流を見渡す。

空っぽの午後に放り出され

あっけらかんの風に吹かれる

女の乳房を忘れた男。



そうか十年前、

俺はあの橋を毎日自転車で走っていた。

傘は持たなかった。

朝の雨に濡れていくのが好きだった。

学校の屋上で

蜘蛛の巣を流れる雨粒を

飲んでみたいと思っていた。

迷い込んだ自転車置場の暗がりでは

休息中のサドル達がひしめきあっていた。



そして男は流木に手を伸ばす。

乾いた河の骨は

男の体よりも背が高いのに

とても軽くて。





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