河原の骨を掴む河原の石のベッドに横になるろっ骨。 むき出しのテトラポットに絡まる木の根っこ。 暖められた塊の 乾いた肌を 頭蓋骨と擦りあわせる男。 六月の晴れた日に 流木を拾いに来たのだが、 この河にはあまり水がない。 ダムで淀む水を想像して上流を見渡す。 空っぽの午後に放り出され あっけらかんの風に吹かれる 女の乳房を忘れた男。 そうか十年前、 俺はあの橋を毎日自転車で走っていた。 傘は持たなかった。 朝の雨に濡れていくのが好きだった。 学校の屋上で 蜘蛛の巣を流れる雨粒を 飲んでみたいと思っていた。 迷い込んだ自転車置場の暗がりでは 休息中のサドル達がひしめきあっていた。 そして男は流木に手を伸ばす。 乾いた河の骨は 男の体よりも背が高いのに とても軽くて。 |