マンガの作者は、横井福次郎 |
コイルをまくようにしっかりと 身体を拭いた少年が はじめての海から帰っていった キリモミの蚊屋のなかへと 夏の夜に 少しだけ動く 釘箱の釘 方形の杉板に砂やすりをかけるように シャワーを浴びた少年が はじめての女から帰っていった 鉱石ラジオの挨のなかに 夏の夜に 少しだけ鳴る アンテナのひげ(*1) レシーバーの汗が頬を伝うように 村を出てきた少年が はじめての職場から帰っていった 仕事と同じ回路のなかへと 夏の夜に 少しだけ溶ける プッチャーの耳 ……を バリコンと勘違いしつづけた十年間! webpage制作者註 (*1)「ひげ」に傍点あり。