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極点思考1

「詩の電子図書室」について


 1996年12月中旬に、このホームページに「詩の電子図書室」を開き、その第一弾として清水哲男詩集『スピーチ・バルーン』(1975年刊)の全編を、その詩集についていたイラストを付けて掲載した。

 自分のホームページに他の詩人の詩を掲載しようと思いついた動機は、書肆山田発行の「るしおる」という小冊子に、清水哲男氏が詩集のデータベースの必要性を述べているのを読んだからだった。清水さんは、自分では『増殖する俳句歳時記』というホームページを開いているが、自分の詩は載せていない。氏のホームページに対する考え方が出ていると思う。それなら、わたしが清水哲男の詩を公開したらどうだろうと考えて、Mailをやり取りして、「清水哲男の書棚」を作ることになったわけである。

 「詩の電子図書室」としては、他の出来るだけ多くの詩人の詩を公開したいと思い、数人の詩人に掲載の許諾を問い合わせたが、インターネットについての理解が行き渡っていないせいか、快く承諾してくれた人は極めて少なかった。詩集の紙面の言葉の配置にこだわる人もいた。また、詩人は即座にOKしてくれても、詩集の版元が「無料公開」にこだわるということもあった。そういうことは、これから解決して行かなくてはならないだろう。

 とにかく、詩集も詩の同人誌も発行部数は僅かなものだ。このホームページは、2月から数えて、12月でヒットカウントは8000を越えている。この読者の8000という数字は、1000部を売り切れたとしても(大抵は売り切れない)、それに何年も掛かるという詩集の立場からすれば、驚くべき数字なのだ。読まれなくてもいいという気持ちは、詩人の心の片隅にあるが、でも、多くの人に読まれれば嬉しいにちがいない。わたしが、多くの人に読んで貰いたいと思う詩集や詩誌を、読者と出会うチャンスを増やすということで、これから載せて行こうと思う。

1996年12月30日 
 [1997年1月4日追記]『スピーチ・バルーン』をインターネットで読んだ若い人が、「難しい」という感想を寄せてくれた。この詩が難しいのか、と瞬間、返す言葉に詰まった。なるほど、ここに流れている感情は、ある時代を、その時代を包んでいた気分を知っていないと直感的には分からないのかも知れない。それならそれで、その感情を即座に共有するという前に、立ち止まって、1970年代の日本で一応青春を終えた人間の感情を手に入れるための手順を考えた方がいいのではないか、と思った。
 手の込んだことになるかも知れないが、このインターネットという電子メディアで使われる言葉の裏には、紙面とは違うスピードの時間が流れているから、それを計算に入れた意味の発現のあり方(というのは、言葉の場面として、デジタルストリームを感じている意識というのは、紙面を見ている意識とは違うわけで、それを)を把握した上での言葉の使い方を習得しなければならないことになり、それを踏まえたところの読ませ方を考えないといけないように思った。

 更にまた、挿し絵掲載について、装丁者和田誠氏にお手紙を差し上げたら、漫画の一つ一つについて著作権に触れる心配があるという指摘を頂き、急遽、画像を消去したのだった。いろいろと問題があるものです。

[1997年1月19日加筆]清水哲男詩集『スピーチ・バルーン』の詩は、それぞれの作者が成長する過程で出会い、そのとき胸をときめかせ、心を燃え立たせたマンガのキャラクターに重ねて、自分の思いをのべているわけであり、そのキャラクターのイメージは詩の中に引用されたものになっている。従って、そのイメージがないと詩は不完全なものになってしまうわけである。作者自身も詩集にイメージを載せるとき引用のつもりだった述べているので、その作者に意図に従い、このWebページでは元の詩集からの転載ということで、マンガのイメージを復活させることにした。  
   鈴木志郎康



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