『Intrigue』Vol.2

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川本真知子の作品について

「季節のかわりめ」
  最初に発された言葉が、つぎの言葉を生んでいくというような、ふしぎな
テンポをもっています。ブーゲンビリアの蔓、という比喩もいい。ただ、ここ
で語られる「わりといい夢」というのは一種のせつなさを伴う「夢」ですよ
ね。そのせつなさのところまで表現されていると、もっと良くなるという気が
しました。(奥野)
  想像をかきたてられる詩だ。会ったらきっと赤面っちゅーのが すごくわ
かるわー。季節は寂しくなったけど 夢の中では紅いブーゲンビリアって き
れいやな。”とんぼ”と”季節”が重なってるのも うまい。昔の男が登場す
るので 男友達の”古い”はない方がいいと思うけど・・・そーすると 男と
まぎらわしいか・・・うーん。(恩地)

「原始の目玉」
  「目玉」というちょっとギクリとする言葉が、この詩のなかででてくる
と、とても情緒豊かに感じられることに驚いてしまう。「電気のなかった時
代」のお話をみるような、古い時代の情緒あるれる詩でした。(奥野)
  りんごをハンカチで・・・って西洋のおまじないみたいや。りんごって不
思議な力あるからなあ。イヴのりんごとか 白雪姫のりんごとか。
  野性を秘めて恋愛を楽しむって感じ。(恩地)

「うたたね」
  「イランイラン」とか「ルビーピンク」とか、どこでみつけてくるのか、
こういう言葉づかいは川本さんの独特の個性だなあと思います。「賀状を送り
あうだけの別れた人」との関係の設定がややあいまいではありますが、川本さ
んの言葉を選ぶときの細心さがものすごく生きている詩です。(奥野)
  おおっていた現実が とけおちて、しんとした夜空が現れた気がした。香
りだけは強くなって。川本さんの詩って いつも色が鮮やかで きれいだ。
  そーいえば年賀状を送りあうだけの仲って不思議やな。いつも一緒にいる
友だちより、思いやりのある言葉をかけている(書いている)。年に一度だけ
やからか 共通の話題が不足しとるからか。まー 会いたいって書いてもほと
んど実現せんけど、絶ち難い友だちって居るよね。(恩地)



恩地妃呂子の作品について

「Kちゃん」   Kちゃんという呼び方が示す二人の距離感がとても可愛らしく、あたたか いなと思いました。Kさん、や、Kくん、では膝枕なんてできませんよね。恩 地さんの詩は、話し言葉が自然にでてくるので、感情も素直に伝わってきま す。あったかくて読んでると気持ちがなごんでしまいます。(川本)   ひさしぶりに恩ちゃんの個性である飾らなさがでている詩で、いいなあ、 としみじみしてしまいました。方言ってある意味ではすごい武器だよね。この 言葉づかい、ほかの人にはぜったいにマネできない。(奥野)

奥野雅子の作品について

「あかるい真昼に電車に乗って」   改訂されて とてもよくなった。前回私は、てっきり恋人のことを想って いる詩だと思った。”置きざりにされたシャツ”が”にぎりしめ”られ つい た”皺”・・・前回はシャツの”染み”だったので、何だか甘い思い出にきこ えてしまっていたが、今度は、忘れていた記憶、傷つけられた私 を強く感じ る。自分に怪我させた人でも包みこむなんて、強くて柔らかいなあ。(恩地)   過去に「私」を傷つけた人への静かでおだやかな反応が好きです。それは 憎しみや復讐、怒りですらないのですね。(川本)   ついに改訂版までつくってしまった・・・。自分を傷つけた人に会いにい く、という意図をどうしても表現したかったので。ある意味で宗教的といえば 宗教的ともいえるテーマで書いてみました。(奥野) 「ふりかえらないで」   自動扉に映る 見知らない男がとても印象的だ。そんなところからも「ふ りかえらないで」というタイトルより他にもっと合うものがあるのでは?最初 の”どこへ行く電車でもよかった”の連が好き。傷ついた心がぐるぐるまわっ ているような、そんで目眩がするようなスピードが感じられるから。しかもそ の後は 淡々としているので特に効いている。’淡々と’といったけど、冷め ているわけではなくて(これが私の顔だろうか)と悲しみをあとから気づくほ どに心の中が空っぽな状態ってことがよく表されていると思う。(恩地)   「ふりかえらないで」でのスピード感よかったです。どんなに辛いことが あっても、驚くことがあっても、「電車に乗る人」を誰もが演じなければなら ないいじらしさのようなものを感じました。(川本)     じつはこの詩は今をさること9年前、私がまだ高校生だったときに思いつ いたものです。ようやく陽の目をみることになって、よかった、よかった。最 近、推理小説にハマっていたので、ちょっとサスペンスふうです。(奥野) 「雨の窓」   降っている雨でつくられた詩は、よくあるけど、降りやんで窓にのこった 雨の跡からつくられた詩とは新鮮だ。強い孤独感じゃなくて、静かなぼんやり とした孤独に気づかされる。奥ちゃんは、今と記憶との交差のさせかたが、う まい。車のヘッドライトから白くまぶしい校庭・・・アスファルトの校庭から 黒々と広がる空。網の目になって葉の蔭がきらきら、学生の声から小学生の子 供たち・・・ずっときれいにつながっていて、一気に読んだよ。(恩地)   無邪気だけでは決してくくりきれない子供の輪。(むしろ酔って騒ぐ大人 の方が無邪気?)そこで繰り広げられる思い出に想いを馳せました。雨に誘わ れて流れ出した記憶の数々を映像でおっていくことができたのはひとえに奥野 さんのたしかな描写にあるのだと思います。それでいて叙情的な詩ですね。 (川本)   「きょうは詩を書こう。」と決意して、ほぼ一日でこの詩を書きあげまし た。やればできることも(たまにだけど)ある。(奥野)


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