『Intrigue』Vol.2

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りっすん とう 門司弁

りっすん とう 門司弁

                          恩地 妃呂子

 うち、父親似で モノが捨てれん性格やけ、
”すてられないもの”っちゅうても ありすぎるわー
「でも、おんちゃんにとって 方言がすてられないものなんじゃないかな」
ああ、そうか・・・奥ちゃんの言う通り、私の頭ん中には このことばやない
と、表現できんことばっかしや。思い出もそうや。考え事もそうや。・・・ち
いと やーさんっぽいけど(そこがまたかっこええ)、大好きな門司のこと
ば。
 東京で寮に住んどった時も、バイリンガル(標準語と方言を上手く切り替え
れる人)がようけ居ったけど、私はだめやったわ。ちゅうか、”自分”を演ず
るために、意地で方言使うとったんかもしれん。私は変わらんぞッって。
 バイリンガルが実家に電話しよると、いつもと全然ちがうけん、びっくりす
るっちゃ。そんなんも おもしろいけどね。新しく住んだ土地の言葉にかえて
しもた友だちも何人か居る。それは それで ええ と思う。郷に入れば・・
・ちゅーしね。大阪に住んどる おいちゃんは、下関出身やけど 今はほとん
ど完璧に大阪弁しゃべる。これが本人に似合うとってかっこええと思う。生ま
れたとこの言葉が、自分のことばとは限らんもんね。
 だいたい方言自体も、個人的なとこで違うとるからね。私は、下関よりの門
司弁やし、友達も育った環境によって、博多入っとったり、広島入っとったり
する。その人の歴史があるっちゅう感じやね。似とっても違う。親でもね。や
けど、たう(触れる+届く)とか、なおす(かたづける)とか、通じたら、や
っぱしうれしいね。方言が似とるだけで親近感ある。高校野球で近いとこ応援
するような。
 自分のことばを誇りに思えるようになった分、いろんな方言にも興味がで
た。秋田の人が地元のことばで話とったら かっこよう見えた。つぶやきシロ
ーも、栃木弁(地元の人の中には違和感のある人もおるかもしれんけど)で自
分を出しとるから おもしろいんやと思う。私も 門司弁を 魅力的なことば
として人に伝えたい。
 門司に帰ってきて気づいたんやけど、バスん中の会話っち おもしろいけ
ー。ものすご みんな 門司弁やん。あたり前やけど。あー、こーゆー言い方
するっちゃねーって、私は こそっと メモとっとるんよ。
ある高校生たちの会話、
「あいつ、ちゃきーイ」(有気音で)
「こんど クラそーや」(巻き舌で)
- あいつ、ムカつくー
- こんど シメようぜ
なんか物騒やけど、こんな時 私の中で、凄味があるんは 門司弁やもん。
昔は こんなん気にもならんやったのになー。私って 得しとるわ。
いっぺん離れたおかげで 故郷の大事さを知ったっちゅーか、おもしろうなっ
た。
 このことばは、私を表現する手段なわけやけど、それよか 私の日常のエキ
スなんやな。



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