*恩地妃呂子の作品について*「星をふんではやあるき」 ◆空を見上げる力もなくて、見おろした地面のアスファルトが星空にみえてくる、という発想には、疲れきった時に、現実を逃れて空想に入り込んでひたってしまいたくなるような気分がよくでていると思う。(奥野) ◆長い通勤時間は 眠るか 詩を考えるかして 過ごします。その時間を そのまんま 形にしてみました。流星群を体験していただけると うれしい。(恩地) ◆仕事帰りのはやあるきの雰囲気がわかるなあという感じです。疲れてはいるけれど行きよりもなぜか歩調がはやかったりするんですよね。(川本) 「近寄る」 ◆顔のなかでとくに「歯」という部分に注目しているところに、色気があっていいなあ。(奥野) ◆いい思い出。いつもこうだといいのにな。(恩地) ◆短い詩の中に、触れ合える距離に近づいていくようすが伝わってきてとても甘い感じがいいです。(川本) 「夜景」 ◆「たった一つじゃない それが好き」というセリフにやさしい感じがあってすごくよかった。ただ、「屋上から」というのが寮の屋上なんだというのが、知らないヒトにはちょっとわかりにくいかもしれないので、「屋上から新宿を見た」のあとを、「この寮からは ちょうど都庁が 見える」にしたらどうでしょう。(奥野) ◆昔から夜景好きなんです。寮生活もなつかしい。(恩地) ◆「写真にうつしてもそれは違う」夜景をじっとみて心のなかに思い浮かんだことを素直にそのままに表したようで共感をおぼえます。(川本) 「ろうそく」 ◆日常的と言えば日常的な詩を、「マラナタ マラナタ」というふしぎな言葉が印象的にしている。(奥野) ◆寮で一緒に過ごすと やはり 絆が強い。この詩は、友人との交換ノートで“ろ”を頭文字にする時に作りました。(恩地) ◆聖夜のおごそかな雰囲気が「マラナタ」というどこかユーモラスにも聞こえる響きと一緒になってよかったです。ろうそくの火を剣や花にたとえられる恩ちゃんの感性はものごとの多面性をとらえていて優しいと思う。(川本) *川本真知子の作品について*「寝起きの水」 ◆二行ずつの連で書いていく書き方が、ムリなくとても自然に感じられてしまうのは、川本さんが独特のリズム感をもっているからだよね。絶望・期待・誤解といった重たいことばをなんなく使っているのもいい。「みどり濃くて色はいいわよ」と突然セリフをいれているところがひときわ光ってみえた。(奥野) ◆モンステラの描写が好き。朝―いきなり元気!っていうのでなく、少しずつ目覚めていく…ふんわりとしたまるで休日の朝のような、いいことありそうな朝やね。(恩地) ◆無意識のうちに伸びをして寝起きの体を整えるように、気持ちのエンジンも自然にかかる、そんな穏やかな朝が理想でした。(川本) 「小休止」 ◆文房具のことを『文用品』と言っているのが、情緒があっていいなあ。せわしない日常のなかで一瞬手にいれた静けさ、ホッと息をつく瞬間というのが、とてもよく捉えられている。ただ、「磁石」「火打石」という言葉の出し方が、やや唐突な気がします。(奥野) ◆ちかごろ 周りに流されていた 自分も、ふと一人になってみると、ちゃんとまだ奥の方に いきいきしたものが かくれているっていう…なんか うれしくなるね。臙脂色は天使の翼の色?(恩地) ◆友人が「いつも大勢で昼ご飯にいくとクセになって一人で食べられなくなるからなあ」とつぶやいていました。案外私も一人でいる小一時間すら、たえられなくなるのがこわいから、お昼休み一人になりたいと思うのかも。(川本) 「勾配のきつい坂」 ◆何回読んでも感動的。追憶することのせつなさが伝わってきて、胸の奥が熱くなってしまう。辻和人さんも言っていましたが、「一瞬より長い」時というのが、微妙でいいです。(奥野) ◆とても好きな詩の一つ。以前 辻和人さんがトビヲで紹介されてて、私は 何度も読み返した。こんなシンプルなかたちなのに心乱される。(恩地) ◆「それでもなにかできることからはじめなくちゃ」という気持ちで書いた2年くらい前の作品です。なつかしいな、ふふふ。(川本) *奥野雅子の作品について*「声」 ◆カゼをひいて声を枯らしたときに書きました。じぶんのルーツをたどるよなこの詩。「声」を読みかえしていると、とおい昔のせつない記憶がよみがえってきます。(奥野) ◆風邪で声がかすれて苦しそうだった奥ちゃんと重なる。ただこの中の“私”はもっと違う意味で苦しい目にあっているけど…。街の風景を自然に書けるのが うらやましい。(恩地) ◆奥野さんが「すてられないもの」で書いた出来事とだぶらせて読んでしまいました。けなげに自らの癒されていく様子が印象的です。「戻ってくる」がくりかえすリズムがこきみよくていいです。都会で育った「私」は都会の空でこそ、癒されたのだなとあらためて感じました。(川本) |