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マンガの作者は、武内つなよし |
赤胴鈴之助
冬にむかうグラフ用紙
その方眼の網膜に惨み出る
みかん箱のギザギザの影はつらいよ
2Hのコーリン鉛筆を
いくらとがらせて試みてみても
ぼくの考えるところでは
みかんの入っていないみかんの箱を
もうそれ以上に圧し縮めることは
不可能なのだ
圧縮することによる発汗!
圧縮することによる発熱!
それらの手応えを欠いたところでの
力まかせの圧縮とは
すなわち
恣意的な袋小路に相手を追いつめて
「名を名告れッ」(*1)と叫ぶ少年剣士の
不安を投影するのと同しことだからね
どんなに雪が飛んでいても
あるいは飛んでいなくても
かつて鈴之助が
でたらめな影をひきながら
斬り結ばないことがあっただろうか
その腰に
コンパスのような大小をぶちこんで
真空斬りを熱思する
そのまなざしが
みかんの汁で汚されていないことが
一度だってあったか
だから
圧縮による発語だけでは
みかんの入っていないみかん箱の
投影図を描くことはぼくにはできない
だからといって
決してそれは(くどいようだが……)
チャンバラごっこで傷つけた
ギザギザの定規のせいじやないんだ
ましてや
グラフ用紙のすべての交点でまたたく
寒気滴る
青白い千の落日のせいなんかじやない!
webpage制作者註
(*1)「名を名告れッ なをなのれッ」のルビあり。
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