マンガの作者は、C.M.シュルツ |
人生での驚き──自転車を走らせながら、彼は考える、
それはなんであろうか?生まれること、成長すること、
齢をとること、死ぬこと。最初のことについてはどうこ
うする余地はない。しかし──残り三つはどうだ?
レイ・ブラッドベリ
後退する。 センター・フライを追って 少年チャーリー・ブラウンが。 ステンゲル時代の選手と同じかたちで。 これは見なれた光景である。 後退する。 背広姿の僕をみとめて、 九十歳の老婆・羽月野かめが。(*1) 七十歳のときと同じかたちで。 これも見なれた光景である。 スヌーピーを従えて、 チャーリーに死はない、 羽抜鶏を従えて、 老婆に死はない。 あまりに巨大な日溜りのなかで紙のように、 その影は、はじめから草の根に溶けているから。 そんな古里を訪ねて、 僕は、二十年ぶりに春の水に両手をついた。 水のなかの男よ。それも見なれぬ…… 君だけはいったい、 どこでなにをしていたのか。 どんなに君がひざまずいても、 生きようとする影が、草の高さを越えた以上、 チャーリーは言うだろう。 羽月野かめは言うだろう。(*1) ちょっと、そこをどいてくれないか。 われわれの後退に、 折れ曲がった栞を挟み込まれるのは、 迷惑だから、と。 webpage制作者註 (*1)「羽月野かめ」に傍点あり。