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マンガの作者は、田島啓三 |
冒険ダン吉
舟は眠くなる……なんて嘘をつくな
たとえ黒い日の丸の扇の上を
滑っていても
舟は水を呼ぶから
舟は舟の下に水を止め
舟のなかにも水を溜めるから
お互いに水は
舟板を隔てて相手を叩きあい
末広がりの空に黒い珠を
ひややかに吹き上げてしまうのだから
なにが明鏡止水なものか
野蛮島への水路は
竹骨のように荒削りで
赤い紐の鋭い雨さえ
弾幕のように視界をねじ曲げるのだ
だからダン吉は
眠っていたわけがない
眠ったまま漂着するなんて芸当は
黒い熱球がヨーヨーのように浮沈する
七つの海でできるわけがない
しかし
学校新聞に剰窃した
ぼくの「冒険ダン吉」は
校長室の机の上で
見事に眠っているのだった
扁額の達筆に照らされて
明鏡止水
校長の握った扇子の筋肉が
冷たく逆上しようとする舟の底を
おさえつけていたからだった
それからまもなく
ぼくは転校し
もう田の舟を押すこともない生活に入って
ときおり公園のボートで
眠ることを楽しみとしたのだった
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