[ HOME ]
[「スピーチ・バルーン」目次 ]
マンガの作者は、
レイモン・ペイネ

恋人たち



ぼくたちは肉を食べる
体温計をさしこんだ太股を開いて
このつめたい東京の
つめたい床の上で

壁際で振子のようにとまっているのは
色画用紙のくずがいっぱいつまった
白いビーズのハンドバッグであり
動いているのは
このつめたい東京の
つめたい挨だけなのだから

だからぼくたちは肉を食べる
肩紐のずり落ちた肩をそのままに
このつめたい野菜の芯で死んだ
つめたい虫を意識しながらね

テーブルで木目のように動いているのは
かぎりない糞と綿飴にまみれてきた
赤いマニキュアの指先であり
とまっているのは
このつめたい野菜の
つめたい光りだけなのだから

でもぼくたちは肉を食べる
濡れた靴を脱いだ匂いの充満した
このつめたい四畳半の押入れに
つめたい毛布をしまいこんだままで

ともあれ
最初の一日はそうしてはじまったのであり
そして
それはそれでよかったのだった


次のページ・赤胴鈴之助
|HOME|
[曲腰徒歩新聞] [極点思考] [いろいろなリンク Links] [詩作品 Poems](partially English) [写真 Photos] [フィルム作品 Films](partially English) [エッセイ] [My way of thinking](English) [急性A型肝炎罹病記]

[変更歴] [経歴・作品一覧]