マンガの作者は、坂本牙城 |
♪春ははるさめ、花、木蔭のしげり 夏は唐花草、みのり、ひなげし 秋はぜいぜい、くしゅん、ぞくぞく…… 雨である。肉襦袢のカンテラ少女の、いちばんやわらかいところに、 五日市街道から降りこめてきた。幼年保楽部の羽根車に、朱の髪ひ とすじ貼りついてまわる。蛾は卵を生みつづけ、卵のなかの洪水は すでに府立二中の帽章を煮立てて。そこで少女は、素足の腱を切り に行ったが……。 ♪バビロンまでは何マイル? 六十マイルに十マイル ローソクの光りで行けるかしら? 雪おこしである。火桶であぶる鼻の翼から、小包を解くように現れ てくる死である。枯山水のオコシ(*1)、がらんどうの目茶苦茶 劇である。耐水のための穴である。亀の墨汁、色紙の甘やかな匂い である。編上靴を脱した腱である。そのくきやかな絶命である。 ♪ボビー・シッフトウは船出した、 銀のバックルをひざにつけて。 やはり死である。頭骨の乱れた少年が、藍の抜殻を脱ぎながら、中 仙道を匍匐する。そのかみの、タンクローなる雪だるま。五段雷な るタンクロー。幼年倶楽部の火の銀盤を、よぎって蛇は穴へと落ち た。蛇は卵を呑みつづけ、卵のなかの筋肉は、糸巻タンクも地しば りにして。そこで私は、本を焚いたが……。 *唄の部分は、松本亨訳『マザーグース童謡集』(三笠書 房版)からの引用であることをおことわりしておきます。 webpage制作者註 (*1)米偏に巨の旁を合わせた漢字(角川「新字源」
7250)と、 米偏に女の旁を合わせた漢字(角川「大字源」
7194)との熟語で「おこし」とルビあり。
:おこし |