2うねうねと折れた狭い道を あてずっぽうに歩いていくと 不意に 目の前に石段が現われて そこをのぼると次はくだり坂 おりたところに 疲れ気味の 木造二階だて 木の板に ほたる坂アパートと書いてあった そんな風景を夢でみたことがあって いま わたしは谷中の道を歩いてきた ほたる坂アパート その一室に 幼年のわたしが住んでいて 何をして暮らしているのかといえば 三六五片もあるジグゾーパズルを くっつけたりばらばらにこわしたりして 何かの終わるのを待っているのだった 何かがいきなり始まるのを 待っているのだった |