大川の花火の音を 聞きながら モルタルのアパートの 物干台で 紙袋から線香花火をとりだした 金だらいに張った なまぬるい水に 焼けた滴がしたたり落ちて ジユツと ちいさな悲鳴があがった かたわらで ユカタ姿の幼女がおびえ しやがんだまま 目を閉じた うだる暑さのなかに閃光きらめき 燃える滴は何度も降った かたわらの ユカタ姿の老女は目を閉じ お題目を唱えていた
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