走るタクシーの窓から 秋雨に濡れたみどりの土手を見た 土手に群れ咲く ヒガンバナを その赤を あれは死人花とか 捨て子花とも呼ぶんだってね わたしの視線に敏感に 初老に近い運転手がそう言う それから沈黙があって そしてくるまは走り続け そのあと有楽町のガードをくぐるあたり不意に 東京に捨て子って どのくらいいるのかな、 と呟く (東京のありとあるコインロッカーのなか 赤い産着にくるまって すやすやと眠っている赤ちやんたち) そんな夢を彼もやっぱり見たことがあるのだろうか
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