足袋間屋の娘と、大川に行く 橋のうえからユリカモメを見るために ずっと前にも見にきたことがあった そうではなくて、ふたりして 橋のうえからぼんやりと 流れる水のにおいをかいでいたのだった (足袋をはくひとが どんどん少なくなっていってしまって… だが、それとユリカモメと いったい何の関連があったか) 大川にかかる橋のうえから いま 水面に飛び交う鳥たちを見る かつて見たユリカモメの その幻の白を目で探しながら もと足袋問屋の、もと娘、 明日の朝 上野駅から列車にのる
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