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季節のかわりめ


          川本真知子

電話の多い日だった
昼間は祖母が寝床からだった
古い男友達からの誘いは断った
女友達は鼻声で、くすくす笑った

トンボも空で向きを変え
急に季節も終わったから
みんな寂しくなったらしい
私も

昨夜夢の中で
夢の中で昨夜私は
男に腕を紅いブーゲンビリアの蔓のように
くね  くね  くね  くね
  くね  くね  くね
とまきつけていた

忘れていた
その男とは
もう二度と会えない
いっぱい
して
された
しつこく
しかえした
会ったらきっと
赤面してしまうんだろうな
もうみっともなくて
とてもとても
会えないような男

大きな袋を携えて
こともなげに生きる日常
季節のかわりめに
すこしずれた毛布を顎までもどしながら
くしゃみを一つ
わりといい夢を見た
と思う



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