寝起きの水川本真知子 はずみをつけてカーテンをひくと 今朝の窓硝子は凍っている 私は公園の ふんすいのように伸びをする さっきまで隣で寝ていた 黄色い仔犬のあくびの音を聞く くわっ ふああああああ 今日も 絶望も期待もしすぎないことにしよう コップ一杯の 寝起きの水 まずコップから ねだる仔犬に数ミリわけてあげる ベランダの モンステラにもわけてあげる 葉が若いとき 小さなハート型をしている だんだん裂けておとなになった そのかたちは、すこし滑稽 でもみどり濃くて色はいいわよ 染み込む水 くぼんでいく土 今日も 美しい誤解をしていこう 朝の水一杯が 私の体内を通りすぎていく |