『Intrigue』Vol.2

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寝起きの水

寝起きの水

                 川本真知子

はずみをつけてカーテンをひくと
今朝の窓硝子は凍っている

私は公園の
ふんすいのように伸びをする

さっきまで隣で寝ていた
黄色い仔犬のあくびの音を聞く

 くわっ
ふああああああ

今日も
絶望も期待もしすぎないことにしよう

コップ一杯の
寝起きの水

まずコップから
ねだる仔犬に数ミリわけてあげる

ベランダの
モンステラにもわけてあげる

葉が若いとき
小さなハート型をしている

だんだん裂けておとなになった
そのかたちは、すこし滑稽

でもみどり濃くて色はいいわよ
染み込む水 くぼんでいく土

今日も
美しい誤解をしていこう

朝の水一杯が
私の体内を通りすぎていく




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