『Intrigue』Vol.2

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小休止

小休止

             川本真知子


この階には私だけが残っていた

いつも
廊下ですれ違う人の気配を気にしている
さてと、集まり、昼食へ繰り出す
六人の同僚
せわしなく続くおおきな話し声と
ぱたぱた走り急いでいった人々の気配
ちかごろ磁石をもたない私も
手をやすめ、小休止。

やれやれ(さぐるポケット)

火打石の音
ぐんと伸びる炎
私の人生のあとさきに
はためいた
はためくはずの
夢を色彩にたとえようか

天使の使い古した翼色、臙脂色
いいえ
ほこりをかぶった文用品に似た白
ほんとは
かろやかな玉虫色がいい
スプリングコートのように
はためく




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