高速沿いの風景川本真知子 「トラックが通ったよ」 モニターにも 「うん、来た来た」 のはだいぶたってから 行き交う音の中で 日常の些事に 目をつむる 「ほら、次はバイクが行くよ」 それぞれが いつもどおりではない場所に 少しずつおびえているのかもしれない いつもを取り戻そうと 魔法瓶に水を注ぐ 銀色にうつる私の顔は揺れて 何度か、ちぎれる それにばたんとフタをする ままごとみたいな コーヒーをいれて 迎えた午前十一時は 宵の驟雨と高速道路を しらぬほどに 晴れていて 乾いていて こんな日は今日しかないような気がする |