もう一枚も葉が残っていない 冬枯れの並木道で 空を仰ぐと うっすらとつめたい昼の月と 梢のあたり つかい捨てられた小鳥の巣が見える 夏には幾重にも葉に覆われて 生きて囀るものがあそこにいたが 冬は風と夢の季節で もうすこしひとりで辛抱しなさいと ぼくの脳細胞で呟き続ける不思議なおばさんも スコットランドあたりで靴下を編んでいる おばさんの小さな窓を 灰色の小鳥が嘴でつつくと そうかいあのこは梢を見あげていたかいと おばさんは頷いて徴笑みをうかべる
前のページ・浜木綿のかげに運動靴を置いて 次のページ・雲
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