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遠い花火


唇には歌でもいいが
こころには そうだな
爆弾の一個くらいはもっていたいな
ぼくが呟くと
(ばくだんって
あのばくだん?)
おばさんが首を傾げて質問する
そうですよ ほかにどんなばくだんがあるのですか
こころに
爆弾があって
信管が奥歯のあいだにあって
それをしみじみと噛みしめると
BANG!
ぼくがいなくなってしまうんだ
(いいわね そのときはわたしも
吹きとんでしまうんでしょ?
遠い花火のように)
おばさんとぼはく
ぼくが少年のときの海と空を
同時に思い出す
荒れ騒ぐ波のうえを
鴎が数羽とんでいる
はやくあのこのところへ行かなくちゃと
息はずませてボートを漕いでいる
若いおばさんもいる
おばさんには
村の道にぽつんと立っている
たよりない子供の影も見えていて
その子がやがて
〈ボ−トを漕ぐおばさんの肖像〉という
いくつかの詩を書くのである










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