郊外の道を歩いていたら 小さな館の前に出た (はいってごらんなさい あなたの館よ) ぼくの脳細胞に不思議なことを囁く おばさんの声がきこえて もちろんぼくは扉を開けた そしてぼくが見たものは 産着からレインコートまで さまざまな古着さ 膝のところが擦り切れた子供のズボン 埃だらけのセーター 鼻血がこびりついたアンダーシャツ みんなぼくが着たもので ぼくは失われた時の 記憶の館に立っていたんだ 出ようとして開けた扉はしかし出口ではなくて ぼくはつくねんと立ちつくす男のうしろ姿を見てしまった もうわかっている あれは明日になれば動き出す ぼくの背中だ |