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  壁に沿って


あらゆる粉飾の礫を拒んで 壁が
壁として果てしなく風の地帯へのびている
わきおこり吹きあげる風の地帯
その一歩むこうがきたない地平線

壁に沿って
おれはおれにしがみついて歩く

ここは冬を待つ市街
ここはきみをとても好きになる季節のはずれ
ここは息苦しい夜あけの部屋
ここはオン・ザ・ロック
壁をへだてたむこうがわ
髪を風にめりこませながら
きみはきみにしがみついて歩いているだろうか
あるいは
逃げのびていく風のみだろうか
風が草をかき鳴らし
誰かがひとり遠く激しく泣きやまない
泥土よ
人どものけちなイメージを食いちらしてくれ
食いちらしながら 完璧に腐れ!
両肩をつりあげ
ジャガイモの皮をむいている不幸なやつめ

壁に沿って
おれはおれにしがみついて歩くか
ケッ
おれたちが紙きれにベタベタと書きつけた
センチのねり菓子
壁の恐怖は ほら
おれの脇腹を蒼く皺くちゃにする
腸は棒状に猛りくるって
おれを壁に追いつめる
おお 世界の踵がおれをこづく
声あげて おれは
尻からうまく割れるだろうか

朝のシャツに突き刺さっていた一本のビンのように
きみのことがとても気になる
〈夢なんかもうもちまいな〉
〈もう若いのだから!〉
とめどなく膝をよしのぼってくる夢のネバネバ
壁がおれを追いつめ
壁がおれを走らす
宙に跳んでぶッ倒れるのはいつだろう
歩きつづけるこの節足!



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