どもりながら新宿のプリンを スプーンで必死にしゃくった おれにとって いつも きみの耳やおっぱいや腋毛や腿は どうでもいい時間でしかない さあ 語れ! あせもだらけになって折れ曲がっている都市 アリナミンの広告看板に シャッターに ガレージに ポリ・ボックスに 露がびっしりおりている そして だれかがふざけあっている おれは背をしゃんと立て 街をたちわって駆けたい 幸せなデブどもは 巧妙な演説のあとでゼニを撤け 百姓どもは耕して種を播くか おれはむしろきまじめに酔って 尿意を もよおしたいのだ まだ浅い都市の明けがたの欠落に 花の三度笠あみだにかぶり 窓よ 泣け! きみと抱きあって どこへ流れはしめようか── すぐにつまづきそうで とても不安だ おれたちがここにこうして しなう愛の枝々に耐えることの何とせつないまぶしさ おれは腹ばいで汗だくになってきみを裏返しつづける 夢の突っ端で 草のなかで 河原で 岩の割れめで …… ペプシを抜け シャッポを脱げ 街で騒々しい事件が起こる暑い日に 部屋を水いろに染め おれたちは陽気な恋人たちでありたい さあ 語れ! あまいグループを焼き払うことの 仰向いて目をとじることの 早朝の雨のなかをびちゃびちゃ帰っていくことの 都市を孕もうとして声あげることの 暗い暗いこころの火ぶくれを…… 午後のシャンソンが 雨のように背にふりかかってやまない 都市はとても攻撃的で おれたち またしても空腹だ 空腹の笹っ葉になって流れはじめる ああ もう激しく泣きだしているきみの眼と股 ばらばらにこわれてとび散る言葉 おれは陽気なブリになって その 冷たくときほぐされた髪の深い繁りになだれこむだろう 冷えておれをすべすべしたひたいでむかえよ またしても時代は巧みに身をずらしながら退く そらぞらしい言葉だけが汗ばんでくる 突然 おれは きみの美しい盲腸の手術跡を掌に奪う そこからなごもうとするおれたちのうっすらとした眠り シーツが棒状に起きあがり カーテンが割れ 窓はのけぞる にがい! おれの視野いっぱいに押しよせる 泥砂の斜面のみごとなういういしさ すべすべのひたいが 泣きじゃくる泣きじゃくる |