1998年4月23日
アマリリスと人形。
アマリリスと人形、なんて書くと、童話のタイトルみたいだが、実はこの人形はわたしの姿を象った人形なのだ。これは、今年の多摩美二部芸術学科を卒業した戸井紅子さんが卒業制作として作った学友や教員たちの数十体の人形の「BENIKOTOY」の中の一体。「あれ欲しいな」と卒業式の後の飲み会で言ったら、先日、持ってきてくれた。アマリリスは、今丁度、わたしの家の部屋の中で咲いている。
卒業展で展示されたとき、それぞれの人形が似てる似てないと話題になったが、作られた当人としては、自分の分身が作られたということで、奇妙な感情を持った。ご覧の通り、羽を付けた昆虫に仕立てられている。肖像画を描かれたのとは違い、「BENIKOTOY」の世界の中に、役者のように役を与えられて立っている。自分とは違う自分がいるという、自分の境界が曖昧になっていくという感じなのだ。
ちょっと怖い感じもする。そこを逸らせたいという気持ちも働いて、ちょうど咲いたばかりのアマリリスと組み合わせてみた。それでいくらか、自分という意識から離れることが出来た。物の形になるというのは、強力な力が働くと改めて思った。
話変わって、ヨコシネに焼き直しに出した「芽立ち」のプリントは、見事に黒身のコマの間の白線が消えて上がってきた。やったね、さすが、ヨコシネの佐藤さん!光学処理でやってくれたという。焼きの調子も上々。「イメージフォーラムフェスティバル」での上映の運びが整ったというわけ。今日、研究室にこの映画の中で「胃が痛い」という歌を歌っている橘君が尋ねてきて、茨城に住んでる親御さんが是非みたいといっているということで、切符を買いに来たので、招待することにして、2枚進呈した。まだ就職してない橘君への風当たりが、弱くなるといいのだが、逆効果になるかという心配も。